社員やアルバイトなどのスタッフに最も理解してもらい辛いのが、カフェや喫茶店を運営していくのに、どれぐらいの費用がかかっているのか、つまりどのぐらいの経費がかかっているのかという点です。
ときどき経営者でもきちんと把握していないことが多いのですが、さすがにそれは論外としても、自分のお店でもない社員やアルバイトに理解を求めるのは並大抵のことではありません。
先日も、カフェではありませんが、スタッフの経費に対する考え方について面白い事例を見つけました。
月に45万円の利益を出し続けてるんだけど 俺の給料は20万円 零細でその他にかかる経費はほとんど無し つまり25万円が社長の取り分 普通こんなもん?
~中略~
いずれ独立して今の派遣先から直で使って貰うのが理想
もう一人相方がいればできる
けどそこの社長と今俺がいる会社の社長が仲良いらしく実現出来るかわからない
社員が45万円の利益(おそらく粗利)を出せば、社長の利益は社員の給料20万円を差っ引いた残り25万円だと言うのです。経営者なら、「これはおかしい」とすぐに気づいて、会社の取り分、ひいては社長の手元に残るであろう金額もある程度予想がつくでしょう。
社員やアルバイトでも、多くの人は「さすがにもう少し少ないはずだ」とは思ってくれるかもしれません。でも、重要なのは「そう考える社員やアルバイトもいる」という事実です。
カフェはただでさえ人手不足な飲食業であり、その上、スタッフのモチベーションがそのままお店の魅力に繋がる業種です。「社長がピンハネしている」「売り上げだけ見ればウチのお店は相当儲かっているのに時給に反映されない」と思われても大変です。
ただ、「それなら代わりが効く、誰でもできるような仕事ならスタッフもどんどん入れ替わっても良いし、経費の概念なんて理解してもらわなくていいでしょう」と思われるかもしれません。
そうでもありません。経費と売り上げの関係は社長だけが把握していれば良いものではなく、スタッフの理解も欠かせないものなのです。今回は、「社員やアルバイトが経費を理解するメリット」についてご紹介したいと思います。
なぜ経費を理解してもらうことが重要なのか
ココで言う経費とは、事業税や消費税、社会保険レベルの話ではありません。もっと手前の直接経費や間接経費と呼ばれるものです。
たとえば、テイクアウトでコーヒーを提供する場合、1杯あたりの経費は約40円かかります。
経費の内訳
耐熱カップ15円
リッド5円
水道光熱費5円
ペーパーフィルター4円
コーヒー豆10円
※スペシャルティコーヒーやプレミアムコーヒーなどを使う場合は、コーヒー豆の原価も上がります
ココに砂糖やミルク、マドラーを使う方も出てくるので、実際は50円ぐらいの経費が必要でしょう。
これはきちんと過不足なくコーヒー豆を挽くことができ、そのぶんのお湯を毎回キチッと用意し、耐熱カップなどを一個もムダにしない場合の計算です。実際はどんなにプロがやったとしても多少の誤差が出てきます。
そしてそれがアルバイトになると、さらにロスが増えます。
「カップを汚しちゃったけれど1個ぐらいいいや」「フィルターを1枚ムダに濡らしちゃったけどいいや」「コーヒー豆を少し大目に挽いちゃったけどいいや」etc……。こういうことが積み重なると、1杯あたりの経費が際限なく上がります。
これはまだコーヒーなので良いほうですが、ハムやチーズ、パンなど1切れあたりの単価が高い商品で「少し厚めに切ってしまう」と、数十円からものによっては数百円単位で原価が変わることも。人件費を考えると赤字にもなり得ます。
他にも、電気をつけっぱなしにする、皿洗いの水を出しっぱなしにする、一度沸かしたお湯をそのまま放置して再沸騰するなど、一つ一つは細かいことですが、それを月間数百時間続けると、かなりのロスが生まれます。
原価のように直接必要な経費だけでなく、紙コップや水道光熱費など間接的な経費について、スタッフにきちんと理解してもらうことはとても重要です。
スタッフが理解するには限界がある
そうは言っても、スタッフに経費の概念を理解してもらうのは、並大抵のことではありません。というより、経営者と同じレベルで経費について理解してもらうのは不可能と言っていいでしょう。
実際のところは、社員・アルバイト教育に加え、店舗運営のシステムで防ぐしかありません。
・皿洗いの際の水出しっぱなしが問題なら、皿洗いのマニュアルを作る
・コーヒー豆の使い過ぎが問題なら、グラム数をキチッと決めて、毎回量る
・〇〇をしたらマシンの電源を切るorスリープにするを徹底する
etc……
こうしたルールを徹底するしかないでしょう。
実際、「社員やアルバイトに経費の概念を理解してもらうことが重要」と言ってきましたが、チェーンの飲食店のアルバイトレベルであれば経費について理解していないことがほとんどです。
あれは売り上げが単純に多いからではありません。それもありますが、社員レベルでの徹底した経費理解に加えて、マニュアルがきちんとしているからです。
食材がすでに小包装してあれば材料ロスは出ません。食洗機を使えば皿洗いの水や洗剤ロスも出にくくなります。スターバックスの、カップを見ればオーダーが分かるシステムなども、オーダー取り違えによるロスを防げる画期的なシステムと言っていいでしょう。
個人レベルではなかなかそこまで徹底できないかもしれませんが、言葉にして伝えるだけでは理解できない経費の概念も、システムを通してルールを徹底することで共有できるようになります。
でも、一方で言葉で伝えていくことも重要です。末端のアルバイトならともかく、店舗の中核人物にしたいスタッフには、きちんと経費と売り上げの関係について実感を持たせながら教育する必要があります。
教育とルール作り、この2つを使って、ロスの出来る限り少ないカフェ経営を目指していきましょう。