スタッフ・社員教育の難しさを感じる日々。年数だけでは知識や経験は計れない

30代の他社の社員をスカウトして雇用しました。いわゆる"引き抜き"というやつです。

 

業界の経験は長く10年ほどなので、まあ、他の業界なら中堅どころと言っていいかと思います。アルバイトが多く、移動の激しいカフェ業界ならベテランです。

 

当然ですが、引き抜きなので、それなりに良い条件を出しています。それに、そこらのスタッフよりも能力を期待していた面もあったわけです。

 

ただ、この社員を迎えてみて、この業界の人材不足と教育不足を痛感しました。年数と働いてきたお店から予想されるスキルよりも期待値を下回っていたのです。

 

もちろん、これはそのスタッフが悪いというより、私に見る目がなかったというだけの話です。ですので、ウチのような小さな事業としてはしんどかったですが、2か月の教育期間を設けて特訓を行いました。

 

"職人"の多い業界での言語による伝達は難しい

「見て学べ」「見て盗め」「自分で考えて身に着けろ」ということが一般化している業界は数多くあります。特に、"職人"と呼ばれる人が多い業界は、特にこの傾向が強いでしょう。

 

カフェ業界もその一つです。

 

確かに、見て学ぶべき姿勢や行動、やり方というものはたくさんあります。ですが、言葉にして伝えること以上に、多くの、そして素早く情報を伝達する手段は他にありません

 

そこで、私たちの事務所内では常に「自分の行動に理由をもって、それを聞かれたら説明できること」を重視して教育しています。

 

ただ、業界の経験年数が10年以上経った中堅どころでも、「なぜその行動を自分がしているのか」を説明することが苦手であることが分かりました。

 

これはとても深刻な問題です。

 

今はIT業界にせよ、他の技術職にせよ、職人自身が自分の作品をプレゼンできる能力が求められます。「作品だけを作ることのできる」人材は、あまり評価されません。

 

私の事務所でもそうです。「自分が作り上げたものは自分でその価値を説明できること」を特に重視しています。技術面の教育も確かに行いましたが、それ以上に自分の考えをアウトプットできるようにするのに一番の時間をかけました。

 

"職人"業界では文字知識も不足しがち

そして、もう一つ深刻な問題があります。それは、"職人"業界では文字知識も不足しがちであるということです。もっと簡単に言えば本や資料を読みません。

 

私はなにを差し置いても本を読みます。本にはその分野の知識が体系的にまとめられているからです。もちろん、嘘もありますし、本が全て正解だと言うつもりは全くありません。

 

ですが、「人に伝えられる知識」や「思考を整理しやすい体系的な知識」を手に入れるのに活字に勝る情報はありません。そのため、私の事務所には業界内で出版されている書籍の9割方の書籍を勉強用に購入してあります。

 

ただ、「本の知識なんかより実際の技術や、自分で体験した知識のほうが重要」という考え方が横行しているためか、なかなか本を読む人は多くありません。私が雇用した中堅スタッフも例に漏れずそのタイプでした。

 

すると、やはりお客様の質問に答えられません。ロールプレイングをしていたとき、以下のような問答がありました。

 

私「このドリンクはなぜこの温度で作成したのですか?」

 

スタッフ「一般的にこのドリンクはこの温度で作るのがふつうです。他のお店に行っても同じようなやり方をしていることが多いと思います」

 

私「なぜ一般的なのですか?」

 

スタッフ「この温度で作成すると○○の特徴が出るからです。他の温度では××の特徴が出てしまいます」

 

私「なぜ××の特徴が出てはいけないのですか?」

 

スタッフ「……分かりません」

 

このように、人から聞きかじっただけの情報を言葉にするのは簡単なことではありません。文字にするならともかく、頭の中で感覚的に"わかったつもり"になってしまうと、自分がなぜその行動を取るのかを論理的に説明できないのです。

 

私の事務所では、技術的な特訓とともに、スタッフにこのようなプレゼンテーション教育を2か月行いました。

 

プレゼンテーションは一朝一夕では身につかない

ただ、結果から言えば、必ずしもこのプレゼンテーション訓練は実が成ったとは言えません。これまで感覚的にやってきたことを言語化して伝えるという能力はそう簡単に身につくものではなかったのです。

 

そこで、とりあえずの対応として「お客様にこう聞かれたらこう答える」というマニュアルを作って、そのマニュアル通りにプレゼンや回答をしてもらうという方策を取りました。

 

今のところ、この施策は上手くいっていますが、付け焼刃なことは十分理解しています。

 

まだまだ、こういったプレゼンテーション教育は続けていくつもりですが、なかなか従来の業界であまり重視されてこなかったことをスタッフに導入するというのは難しいものだなと感じる日々です。